介護人材など育成
–社会人学び直し 政府が支援拡充– ~学費支給 最大4年に~
政府は社会人の学び直し支援を拡充する。2019年度から看護師や介護福祉士など専門職の資格取得をめざす社会人への学費助成の期間を1年延ばし、最大4年にする。雇用保険の被保険者が対象で、働きながら学ぶ社会人の需要に対応し、4年の定時制講座にも通用できるようにする。政権の看板政策である「人づくり革命」を進め、人手不足が深刻な業種の人材育成につなげる。
30日に厚生労働省が開く労働政策審議会の分科会で諮問し、8月中をめどに大臣告示を改定する。学費の支援は「専門実践教育訓練給付(3面きょうのことば)制度」を活用する。雇用保険料を原則3年以上納めた人が対象で年齢制限はない。
国が指定した教育機関の講座を受けると、経費の5割を半年に1回支給する。年間の上限は40万円。資格の取得などに結びつけば経費の2割(年間上限16万円)を追加支給する。3年分では最大で168万円を支給しており、4年分の支給上限は今後詰める。
16年度は雇用保険積立金を財源に29億円を給付した。約9600人が学費の一部を受給した。厚労省の調査では、制度の利用者の6割が在職者。4割は離職中で、このうち6割強の人は制度を利用して新たな資格を生かす職などに就いた。
雇用保険の積立金は失業給付の減少で積み上がっており、約6兆円にのぼる。過去最低だった02年度の15倍の規模だ。政府は潤沢な財源を生かし、学び直し制度の拡充に充てる。
制度改正は資格が要る業種の受験を後押しするのが狙いだ。新たに4年の受講期間がかかる業種を対象に入れる。介護の現場などでニーズが高い管理栄養士の育成講座が当てはまる。
制度の利用者の6割が在職者が占める点も考慮する。看護師や理学療法士など最短3年で受験できる資格は、これまで3年分しか学費が給付されなかった。専門学校が開校する夜間や土日の定時制講座は、資格受験まで4年かかるものが多い。
介護福祉士の受験に必要な実務者研修も、受講講座が就職率や合格率など国が指定する基準を満たせば専門実践教育訓練として助成できるようにする。25年度末には介護分野で55万人の人材が足りなくなるとの試算もあり、深刻な人手不足の広がりを防ぐ。
19年度から始まる新たな高等教育機関「専門職大学」や「専門職短大学」での学び直しにも助成する。
制度を利用したい人は受講1ヶ月前までにキャリアコンサルタントの助言を受けジョブカードを作成する。国が指定する講座にまず自分で学費を納め、ハローワークで給付申請手続きをすれば費用の一部が戻ってくる。
政府は「人づくり革命」を掲げ、学び直しの環境整備を進めている。専門学校など短期高等教育機関への入学者のうち25歳以上が占める割合は4.7%(13年時点)と諸外国に比べ低い。大学など高等教育機関の入学者では2.5%と経済協力開発機構(OECD)平均の16.6%(15年時点)を大きく下回る。学び直しにかかる費用の負担や、学習に充てる休暇制度の整備が急務になっている。
政府は専門実践教育訓練制度に加え、社会人向けの語学やパソコン技能の習得など幅広い講座を対象とする「一般教育訓練給付制度」も設けている。現在は学費などの助成率を2割としており、これを19年度には4割に引き上げる方針だ
7/30付 日本経済新聞より