「有料老人ホーム新設支援」-厚労省、介護離職ゼロへ受け皿ー

2020.02.27更新

有料老人ホーム 新設支援

~厚労省、介護離職ゼロへ受け皿~

厚生労働省は2020年度から介護付き有料老人ホームの新設支援に乗り出す。公的施設の特別養護老人ホーム(特養)の入居待ちが深刻な状態が続く中、民間主体の施設整備を補助金で促す。施設開設に必要な介護人材の確保も後押しし、介護の受け皿を拡大する。介護を理由に仕事を離れる「介護離職」をゼロにするという政府目標の実現につなげる狙いだ。

※中所得層入りやすく

※特養整備追いつかず

 介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など「介護付きホーム」と呼ばれる施設を対象に、新設時の費用の一部を負担する。裕福な利用者も多いことからこれまで国による支援は手薄だったが、近年は割安な介護付きホームも増えており、介護の必要な高齢者の受け皿として存在感が高まっている。中所得層でも入りやすい施設の整備を促す。

 財源には介護施設の整備や人材確保などを進める「地域医療介護総合確保基金」を活用する。基金は財源の3分の2を国、3分の1を都道府県が負担する。東京都や大阪府などの大都市で施設を新設する場合1人当たり448万円を払う。地価上昇で施設整備が進まないことを踏まえ、大都市では用地取得の費用の一部も基金でまかなう。

 高齢者向けの施設で最も整備が進んでいるのは社会福祉法人などが運営する特養だ。原則、介護の必要性が高い高齢者しか利用できないが、民間が主体の介護付きホームと比べて金銭面での負担が軽く、直近では約61万人が利用している。

 高齢化の進展で介護を必要とする人の数は増え続けている。介護サービスを利用するのに必要な「要介護認定」を受けたい人は18年3月末に641万人と、08年3月末比で4割増えた。団塊の世代が後期高齢者となる22年度以降はさらに増加する見通しだ。

 国は介護ニーズの高まりを受け、国有地などを活用して特養の整備を進めてきた。だが特養は低所得者の住居費や食費の一部を公費で補助しており、財政面から急速な拡充は難しい。19年4月末で約29万人が入居待ちをするなど需要に供給が追いついていない。

 一方、民間が主体の介護付きホームは財政面での自治体の負担は比較的軽い。介護付きホームは裕福な利用者も多く、これまでは公的支援が手薄だったが、最近は介護付きホームでも厚生年金で利用料をまかなえる手ごろな施設が増えている。

 業界大手SOMPOケア(東京・品川)が展開する「そんぽの家」は入居一時金が不要で、東京都内でも月額20万円程度から利用できる。特養に入れない中所得層の高齢者の受け皿としての役割を狙い始めており、新たに支援の対象を広げる。

 海外でも介護付きホームは需要の受け皿となっている。「ドイツなど介護保険制度のある国では介護度が重い人が多く利用している」(日本総合研究所の岡元真希子マネジャー)という。

 国立社会保障・人口問題研究所によると、65歳以上の高齢者数は15年の約3350万人から40年には500万人以上増加する見通し。東京都では介護サービスの利用者が40年にかけて2倍近くに膨らむ地域もあり、このままでは介護施設不足が深刻になる恐れがある。

 施設の不足とともに、介護人材の人手不足も深刻だ。介護関係職種の有効求人倍率は18年度の3.95倍と、全職種(1.46倍)を大きく上回る。厚労省によると、このままでは25年度に34万人が不足する。

 政府は人手不足の解消策として、19年10月に経験・技能のある介護職員の処遇を改善した場合に介護報酬を上乗せする「特定処遇改善加算」を導入した。

 さらに20年度から導入する介護付きホームの整備支援でも人材確保の支援を盛り込む。施設の開設にかかる職員の研修費などに定員1人あたり最大83万9千円支援する。施設の負担を軽減し、雇用拡大につなげる狙いだ。施設整備と合わせて「介護離職ゼロ」の実現をめざす。

      2020年2月25日付 日本経済新聞より