介護留学生 獲得促す
~奨学金最大168万円助成~
厚労省、採用予定の施設に
海外から介護人材を呼び込む支援策が広がる。厚生労働省は2024年度から外国人留学生を受け入れる介護施設を対象に、奨学金に充てる補助金を拡充する。日本語学校や施設で学ぶ場合に最大170万円程度を助成する。介護人材は世界で奪い合いになっており、日本の人材確保を促す。
厚労省は日本の介護職員数が40年度に69万人不足すると試算する。少子高齢化で海外でも人材不足が表面化するなか、外国人学生に日本を留学・就労先と選んでもらうための環境準備が欠かせなくなっている。
24年度予算の概算要求に関連制度の補助率を引き上げることを盛り込んだ。国と都道府県で積み立てた基金を活用する。現時点で137億円ある。
留学生を将来採用する予定の介護施設に助成する。日本語学校や介護福祉士の養成施設での学費や居住費、入学・就職の準備金といった費用に奨学金を給付する場合、一部を支援する。
補助率を現行の3分の1から2分の1に引き上げる。日本語学校での学費分について最大で年20万円から30万円に増やす。アパートの賃貸料など居住費の補助は年12万円から18万円に上積みする。
一般的に外国人留学生が日本で介護資格を取る場合、標準的なケースは日本語学校で1年、介護福祉士の養成施設で2年の計3年を研修に費やす。補助額は3年間で168万円を上限とする方向だ。
補助率拡充の対象は、これまで外国人留学生の受け入れ実績があるなど一定の要件を満たした施設に絞る。要件を満たさなければ、従来通りの補助率とする。詳細は来春までに詰める。
この補助事業は18年度に始まった。21年度には28都道府県の複数の施設が活用し、補助実績は20年度より3割増の1億4000万円に上った。厚労省は事業者が計画的に人材を採用できるよう後押しする。
語学研修を担う企業にとっても留学生の増加は利点が大きい。鳥取市の鳥取城北日本語学校は、東南アジアなどからの留学生を福祉施設の就職まで橋渡しするコースを持つ。担当者は「日本語の習得に励む留学生の負担軽減につながればいい」と期待を寄せる。
厚労省は24年度に外国人の介護人材を養成するための指導者の育成も始める。適切な指導法に関する知識や技能を持つ専門家を育て、介護施設などに派遣する。学習支援や指導方法について助言し、働く外国人の定着につなげる。
介護人材は慢性的に入手不足の状態が続く。介護サービス職の22年度の有効求人倍率は3.79倍で、全職種平均の1.19倍を大きく上回る。訪問介護員の求人倍率は過去最高の15.53倍だった。
厚労省の審議会は7月から技能実習生や特定技能の訪問介護に関する規制緩和の議論に着手した。技能実習制度を巡っては、政府の有職者会議が新たな制度の創設に向けて今秋に具体策を示す。
社会保障政策に詳しい淑徳大の結城康博教授は「欧米諸国でも介護士不足が深刻ななか、賃金水準が低い日本市場は魅力を失いつつある。企業の人材獲得を支える国の環境整備が一段と重要になる」と指摘する。
日本経済新聞より 2023年9月18日