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「介護自立支援 報酬手厚く」-医療と連携促すー 重度化防止も対象

2019.05.26更新

介護自立支援 報酬手厚く

医療と連携拡大促す ~重度化防止も対象~

厚生労働省は26日、4月から適用する介護保険サービスの新しい料金体系(介護報酬)を公表した。介護を受ける人の自立に向けた支援や、重度化を防ぐ取り組みに報酬を手厚く配ることが特徴だ。効率化に向け残された課題は多い。

 

介護報酬全体の改定率は、昨年末の2018年度予算編成の過程でプラス0.54%と決まった。保険料などを除く国費ベースでは支給額が150億円増える。同日の社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会では、報酬の増額分をどこに配分するかどのサービスを効率化するかの詳細を固めた。

 

柱の1つである自立支は、食事や入浴、歩行といった日常動作が通所介護(デイサービス)を通じて改善できた事業所に対して報酬を加算する。外部のリハビリ専門家や医師と協力した重度化防止の取り組みにも報酬を厚くする。

 

適切な支援を通じ、服の脱ぎ着が自分でできるようになったり、不安定だった歩行がしっかりとした足取りになったりする例がある。

 

介護事業者の間でも「やり方次第で要介護度が改善する人は多い。頑張った事業者が報われる仕組みが必要」との声が根強くある。要介護度が改善すれば生活の質が向上し、給付費も少なくて済む。今回の取り組みはその第一歩だが、加算額はわずかなため「自立支援のインセンティブとしては不十分」(介護事業者)との指摘が早くも出ている。

 

自立支援などを重視する背景にあるのは、逼迫する介護保険財政だ。制度を施行した2000年度と15年度を比べると給付額は約3倍の9兆円、要介護認定者数は倍近くの445万人まで増えた。自立支援を通じて状態改善を促し、給付額の増加幅を抑える。

 

今回の報酬改定では医療との連携拡大への評価も盛り込んだ。特別養護老人ホームでは終末期のみとりに対応するため、夜間や早朝に医師が駆け付ける態勢を整えるなど体制を充実させた施設への報酬も増やす。みとり対応が特養で可能になれば、病院への救急搬送などが必要なくなる。

 

高齢者の「薬漬け」が問題となる中、かかりつけ医と連携した「減薬」への加算も新設する。介護施設と病院間で、利用者の状態について緊密に情報を共有することも促す。

 

今回は報酬全体が増額となるため事業者にとっては収益上プラスとなる面があるが、利用者の負担は増える場合がある。厚労省の試算によると通所介護を週3回、訪問介護を週2回利用している場合、1ヶ月あたりの総費用は訪問介護分で52900円から55290円へと5%弱増える。自己負担を1割とすると200円超負担が増える。通所介護では自己負担は50円ほど増える。

 

特養のモデルケースの場合、総費用は1ヶ月281040円から288730円へと8000円程度増える。自己負担も800円近く増えることになる。

 

今回は介護職員の負担軽減につながるICTの活用促進策は一部にとどまった。特養の見守りセンサー導入で夜勤対応に関する加算を取りやすくするほかには目立った施策はない。

 

給付の効率化は力不足

解説

介護報酬全体の改定率が6年ぶりのプラス改定となった。大規模な通所介護事業所や家事援助サービスの報酬引き下げ、福祉用具レンタルへの上限価格設定など複数の効率化策をそろえたが、給付のムダを抑える半歩にすぎない。医療や年金を上回るスピードで増える介護費の抑制には力不足だ。

 

焦点の1つとなっていたのが、利用者の自宅で調理や掃除を手掛ける「生活援助」と呼ばれるサービスの効率化だ。財政制度等審議会で月100回を超えるような頻繁な利用が問題視され、上限回数を設けるなど何らかの制限をかけるべきだとの声が上がった。

 

最終的には上限設定は見送られ、代わりに平均を大きく上回る利用には市町村による一定のチェックが働く仕組みになったが、どこまで機能するかわからない。

 

比較的収益率が高いとされる大規模な通所介護事業所の報酬も減らされる。ただ、これについては事業者から「規模拡大による経営効率化の動きを妨げる」との指摘も出て、改定にちぐはぐな面が否めない。

 

介護給付費は2025年度に現在の2倍に約20兆円まで増えるとの推計もある。「どこまで社会保険で面倒を見るかの議論をしないと、際限なく給付が増えかねない」(大和総研・鈴木準政策調査部長)との懸念が広がっている。

 

         1/26付 日本経済新聞より